公職選挙法≪第一章 総則≫

法律

第一章 総則

(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。

(この法律の適用範囲)
第二条 この法律は、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の選挙について、適用する。

(公職の定義)
第三条 この法律において「公職」とは、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職をいう。

(議員の定数)
第四条 衆議院議員の定数は、四百六十五人とし、そのうち、二百八十九人を小選挙区選出議員、百七十六人を比例代表選出議員とする。

2 参議院議員の定数は二百四十二人とし、そのうち、九十六人を比例代表選出議員、百四十六人を選挙区選出議員とする。

3 地方公共団体の議会の議員の定数は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の定めるところによる。

(選挙事務の管理)
第五条 この法律において選挙に関する事務は、特別の定めがある場合を除くほか、衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙については中央選挙管理会が管理し、衆議院(小選挙区選出)議員、参議院(選挙区選出)議員、都道府県の議会の議員又は都道府県知事の選挙については都道府県の選挙管理委員会が管理し、市町村の議会の議員又は市町村長の選挙については市町村の選挙管理委員会が管理する。

(中央選挙管理会)
第五条の二 中央選挙管理会は、委員五人をもつて組織する。

2 委員は、国会議員以外の者で参議院議員の被選挙権を有する者の中から国会の議決による指名に基いて、内閣総理大臣が任命する。

3 前項の指名に当つては、同一の政党その他の政治団体に属する者が、三人以上とならないようにしなければならない。

4 内閣総理大臣は、委員が次の各号のいずれかに該当するに至つた場合は、その委員を罷免するものとする。ただし、第二号及び第三号の場合においては、国会の同意を得なければならない。

一 参議院議員の被選挙権を有しなくなつた場合

二 心身の故障のため、職務を執行することができない場合

三 職務上の義務に違反し、その他委員たるに適しない非行があつた場合

5 委員のうち同一の政党その他の政治団体に属する者が三人以上となつた場合においては、内閣総理大臣は、くじで定める二人以外の委員を罷免するものとする。

6 国会は、第二項の規定による委員の指名を行う場合においては、同時に委員と同数の予備委員の指名を行わなければならない。予備委員が欠けた場合においては、同時に委員の指名を行うときに限り、予備委員の指名を行う。

7 予備委員は、委員が欠けた場合又は故障のある場合に、その職務を行う。

8 第二項から第五項までの規定は、予備委員について準用する。

9 委員の任期は、三年とする。但し、補欠委員の任期は、その前任者の残任期間とする。

10 前項の規定にかかわらず、委員は、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に任期が満了したときは、あらたに委員が、その後最初に召集された国会における指名に基いて任命されるまでの間、なお、在任するものとする。

11 委員は、非常勤とする。

12 委員長は、委員の中から互選しなければならない。

13 委員長は、中央選挙管理会を代表し、その事務を総理する。

14 中央選挙管理会の会議は、その委員の半数以上の出席がなければ開くことができない。

15 中央選挙管理会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは委員長の決するところによる。

16 中央選挙管理会の庶務は、総務省において行う。

17 前各項に定めるものの外、中央選挙管理会の運営に関し必要な事項は、中央選挙管理会が定める。

(中央選挙管理会の技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求)
第五条の三 中央選挙管理会は、衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する事務について、都道府県又は市町村に対し、都道府県又は市町村の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは都道府県又は市町村の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。

2 中央選挙管理会は、衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する事務について、都道府県の選挙管理委員会に対し、地方自治法第二百四十五条の四第一項の規定による市町村に対する助言若しくは勧告又は資料の提出の求めに関し、必要な指示をすることができる。

3 都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、中央選挙管理会に対し、衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する事務の管理及び執行について技術的な助言若しくは勧告又は必要な情報の提供を求めることができる。

(中央選挙管理会の是正の指示)
第五条の四 中央選挙管理会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る都道府県の地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙に関する事務に限る。以下この条及び次条において「第一号法定受託事務」という。)の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該都道府県に対し、当該第一号法定受託事務の処理について違反の是正又は改善のため講ずべき措置に関し、必要な指示をすることができる。

2 中央選挙管理会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理について、都道府県の選挙管理委員会に対し、地方自治法第二百四十五条の七第二項の規定による市町村に対する指示に関し、必要な指示をすることができる。

3 中央選挙管理会は、前項の規定によるほか、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認める場合、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認める場合において、緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは、自ら当該市町村に対し、当該第一号法定受託事務の処理について違反の是正又は改善のため講ずべき措置に関し、必要な指示をすることができる。

(中央選挙管理会の処理基準)
第五条の五 中央選挙管理会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る都道府県の第一号法定受託事務の処理について、都道府県が当該第一号法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる。

2 都道府県の選挙管理委員会が、地方自治法第二百四十五条の九第二項の規定により、市町村の選挙管理委員会がこの法律の規定に基づき担任する第一号法定受託事務の処理について、市町村が当該第一号法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定める場合において、当該都道府県の選挙管理委員会の定める基準は、次項の規定により中央選挙管理会の定める基準に抵触するものであつてはならない。

3 中央選挙管理会は、特に必要があると認めるときは、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理について、市町村が当該第一号法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる。

4 中央選挙管理会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理について、都道府県の選挙管理委員会に対し、地方自治法第二百四十五条の九第二項の規定により定める基準に関し、必要な指示をすることができる。

5 第一項又は第三項の規定により定める基準は、その目的を達成するために必要な最小限度のものでなければならない。

(参議院合同選挙区選挙管理委員会)
第五条の六 二の都道府県の区域を区域とする参議院(選挙区選出)議員の選挙区内の当該二の都道府県(以下「合同選挙区都道府県」という。)は、協議により規約を定め、共同して参議院合同選挙区選挙管理委員会を置くものとする。

2 参議院(選挙区選出)議員の選挙のうち二の都道府県の区域を区域とする選挙区において行われるもの(以下「参議院合同選挙区選挙」という。)に関する事務は、第五条の規定にかかわらず、参議院合同選挙区選挙管理委員会が管理する。この場合において、参議院合同選挙区選挙管理委員会が管理する事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とみなして、同法その他の法令の規定を適用する。

3 参議院合同選挙区選挙管理委員会は、委員八人をもつて組織する。

4 委員は、合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員をもつて充てる。

5 委員は、合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員でなくなつたときに限り、その職を失う。

6 委員の任期は、合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員としての任期による。ただし、地方自治法第百八十三条第一項ただし書の規定により後任者が就任する時まで合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員として在任する間は、委員として在任する。

7 委員は、非常勤とする。

8 委員は、合同選挙区都道府県に対しその職務に関し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該合同選挙区都道府県が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

9 参議院合同選挙区選挙管理委員会の委員長は、委員の中から互選しなければならない。

10 委員長は、参議院合同選挙区選挙管理委員会を代表し、その事務を総理する。

11 参議院合同選挙区選挙管理委員会の会議は、五人以上の委員の出席がなければ開くことができない。

12 参議院合同選挙区選挙管理委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは委員長の決するところによる。

13 参議院合同選挙区選挙管理委員会に職員を置く。

14 前項の職員は、合同選挙区都道府県の選挙管理委員会が協議して定めるところにより、合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の職員をもつて充てるものとする。ただし、合同選挙区都道府県の知事が協議して定めるところにより、その補助機関である職員をもつて充てることを妨げない。

15 第十三項の職員は、委員長の命を受け、参議院合同選挙区選挙管理委員会に関する事務に従事する。

16 参議院合同選挙区選挙管理委員会の設置に関する規約には、次に掲げる事項につき規定を設けなければならない。

一 参議院合同選挙区選挙管理委員会の名称

二 参議院合同選挙区選挙管理委員会の経費の支弁の方法

三 参議院合同選挙区選挙管理委員会の執務場所

四 前三号に掲げるものを除くほか、参議院合同選挙区選挙管理委員会に関し必要な事項

17 参議院合同選挙区選挙管理委員会の処分又は裁決(行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。)に係る同法第十一条第一項同法第三十八条第一項同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による合同選挙区都道府県を被告とする訴訟については、参議院合同選挙区選挙管理委員会が当該合同選挙区都道府県を代表する。

18 この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをするものを除くほか、参議院合同選挙区選挙管理委員会については、これを各合同選挙区都道府県の地方自治法第百三十八条の四第一項に規定する委員会とみなして、同法その他の法令の規定を適用する。

19 この法律及びこれに基づく政令並びに参議院合同選挙区選挙管理委員会の設置に関する規約に規定するものを除くほか、参議院合同選挙区選挙管理委員会に関し必要な事項は、参議院合同選挙区選挙管理委員会が定める。

(参議院合同選挙区選挙管理委員会の技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求)
第五条の七 参議院合同選挙区選挙管理委員会は、参議院合同選挙区選挙に関する事務(合同選挙区都道府県の選挙管理委員会が担任する事務に係るものを除く。次項及び第三項並びに次条第一項において同じ。)について、市町村に対し、市町村の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは市町村の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。

2 総務大臣は、参議院合同選挙区選挙に関する事務について、参議院合同選挙区選挙管理委員会に対し、前項の規定による市町村に対する助言若しくは勧告又は資料の提出の求めに関し、必要な指示をすることができる。

3 参議院合同選挙区選挙管理委員会は総務大臣に対し、市町村の選挙管理委員会は参議院合同選挙区選挙管理委員会に対し、参議院合同選挙区選挙に関する事務の管理及び執行について技術的な助言若しくは勧告又は必要な情報の提供を求めることができる。

(参議院合同選挙区選挙管理委員会の是正の指示)
第五条の八 参議院合同選挙区選挙管理委員会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の選挙管理委員会の担任する地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(参議院合同選挙区選挙に関する事務に限る。以下この条及び次条において「第一号法定受託事務」という。)の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該市町村に対し、当該第一号法定受託事務の処理について違反の是正又は改善のため講ずべき措置に関し、必要な指示をすることができる。

2 総務大臣は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理について、参議院合同選挙区選挙管理委員会に対し、前項の規定による市町村に対する指示に関し、必要な指示をすることができる。

3 地方自治法第二百四十五条の七第二項及び第三項の規定は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務については、適用しない。

4 第一項の規定による指示を行つた参議院合同選挙区選挙管理委員会は地方自治法第二百四十五条の七第二項の規定による指示を行つた都道府県の執行機関と、第二項の指示を行つた総務大臣は同条第三項の指示を行つた各大臣とみなして、同法第二百五十二条第三項及び第四項の規定を適用する。

(参議院合同選挙区選挙管理委員会の処理基準)
第五条の九 参議院合同選挙区選挙管理委員会は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の選挙管理委員会の担任する第一号法定受託事務の処理について、市町村が当該第一号法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる。この場合において、参議院合同選挙区選挙管理委員会の定める基準は、地方自治法第二百四十五条の九第三項の規定により総務大臣の定める基準に抵触するものであつてはならない。

2 総務大臣は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務の処理について、参議院合同選挙区選挙管理委員会に対し、前項の規定により定める基準に関し、必要な指示をすることができる。

3 第一項の規定により定める基準は、その目的を達成するために必要な最小限度のものでなければならない。

4 地方自治法第二百四十五条の九第二項及び第四項の規定は、この法律又はこの法律に基づく政令に係る市町村の第一号法定受託事務については、適用しない。

(合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員の失職の特例)
第五条の十 合同選挙区都道府県の選挙管理委員会の委員は、地方自治法第百八十四条第一項に定めるもののほか、参議院合同選挙区選挙管理委員会の委員として第五条の六第八項の規定に該当するときは、その職を失う。この場合において、同項の規定に該当するかどうかは、当該委員の属する合同選挙区都道府県の選挙管理委員会がこれを決定する。

2 地方自治法第百四十三条第二項から第四項までの規定は、前項の場合について準用する。

(選挙に関する啓発、周知等)
第六条 総務大臣、中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙管理委員会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙が公明かつ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない。

2 中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙管理委員会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙の結果を選挙人に対して速やかに知らせるように努めなければならない。

3 選挙人に対しては、特別の事情がない限り、選挙の当日、その選挙権を行使するために必要な時間を与えるよう措置されなければならない。

(選挙取締の公正確保)
第七条 検察官、都道府県公安委員会の委員及び警察官は、選挙の取締に関する規定を公正に執行しなければならない。

(特定地域に関する特例)
第八条 交通至難の島その他の地において、この法律の規定を適用し難い事項については、政令で特別の定をすることができる。

次章、『第二章 選挙権及び被選挙権(第九条―第十一条の二)』はこちら

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